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はじめに
ドラム缶は200リットルの鋼製の缶で化学・石油などの工業材料とその製品を入れて運搬・保管に用いられている。
また、世界中でほぼ同じ形状・大きさで高い利便性があり、性能的にも耐久性・耐火性優れた容器として世界標準になっている。
ドラム缶の仕入れから内容物(商品)の充填(生産)・運搬・保管・販売又は消費までの流れをRFID(radio freguency identicafion)タグの商品情報を読み取ることによって管理する物流ソリューションを検討している。
ドラム缶の内容物(商品)は屋外で様々な使われ方がするので、時には、ドラム缶の天板に雨水が溜まることもある。また、胴体は円筒形でドラム缶同士が接触した状態で保管されている。このようなドラム缶の使用状況及び構造上のため、RFIDタグの商品情報が読み取れない、RFIDタグを取り付けられないなどの難点がある。
本ソリューションを実現するために開発したRFIDタグを取り付けられる、高性能・高機能なドラム缶用ポリエチレン製キャップシール「Pシール」を紹介する。
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ドラム缶内容物(商品)の物流ソリューション
ドラム缶容器を使用する石油・化学工場などでは、ドラム缶を仕入、工場で商品を充填し、工場内在庫をしておき、顧客から受注があると出庫し輸送する。顧客に納品され入荷・検品された後、顧客の倉庫で在庫(保管)する。その後、在庫品は社内で販売又は消費される。
これが「ドラム缶内容物(商品)の物流の流れ」である。(図1)
図1. ドラム缶内容物(商品)の物流の流れ
上記の商品を取扱う作業ごとに各種紙伝票及び帳表類が使用され事務処理作業をしている。その主な伝票は、納品書・受領書・検収書・請求書、入荷・出庫伝票など多数の伝票が使われ人手で処理されている。
ドラム缶は多品種少量生産の商品である。その理由は、内容物とお客様のニーズなどにより、ドラム缶本体の外面塗装(会社カラー、社マーク、商品名など)及び内面塗装(内容物の適合塗料を塗装)、天板、胴体の板厚、および口金の表面処理(メッキ・塗装)ガスケットなどを組合わせた仕様のドラム缶を注文生産している。いわば、オリジナル商品である。
1. ドラム缶内容物(商品)の物流ソリューションの課題
ドラム缶容器を使用する石油・化学工場などでは、ドラム缶を仕入、工場で商品を充填し、工場内在庫をしておき、お客様から受注があると出庫し輸送する。
(1)各種伝票を手作業で処理しているので事務処理スピードが遅く、ミスが発生しやすい。
(2)伝票類の保管・管理に時間がかかる。大量の伝票の保管場所も必要である。
(3)各作業の商品情報を関係者がタイムリーに把握することができない。
(4)医薬品・農薬などの危険物が行方不明になり、大事故につながることもある。
(5)内容物の賞味期限が切れてしまうこともある。
2. 金属対応RFIDタグのドラム缶への取り付けの課題
ドラム缶はシンプルな缶詰形状(図1の左端写真)であるため、金属対応RFIDタグの取り付けには課題がある。
(1) RFIDタグの取り付け場所
RFIDタグの取り付け場所は天板と胴体部分となるが、それぞれ下記の問題があるので、RFIDタグ情報を読み取ることができない。
<天板の場合>
- ドラム缶内容物による内圧で天板の中央部が膨らむことがある。
- バキューム減少により天板中央部が凹むことがある。
- 物を置いたりして衝撃が加えられ凹むことがある
- 屋外保管で雨水及び埃など天板に溜まる問題がある。
<胴体の場合>
- 胴体は円筒形でドラム缶同士が接触した状態でパレットの上で保管・輸送される。(図1右端写真)
他のドラム缶の影になるので一部の部分が読み取れない。
- ドラム缶は転がすこともあるので、RFIDが破損してしまい、取り付けることはできない。
RFIDタグの取り付け場所は天板と胴体部分となるが、それぞれ下記の問題があるので、RFIDタグ情報を読み取ることができない。
(2) ドラム缶用キャップシールは金属製
従来は、ドラム缶用キャップシールはアルミ製・ブリキなど金属製のみであった。金属は電波を通さないためRFIDタグは取り付けられない。
これを解決するために、ポリエチレン製キャップシール「Pシール」を開発した。
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ドラム缶用ポリエチレン製キャップシール「Pシール」の開発
ドラム缶用ポリエチレン製キャップシール「Pシール」はドラム缶口金部の密閉・封印装置で内側に凹部を形成し、金属対応RFIDタグまたはQRコードを装着することができるように設計した。(図2)
ドラム缶には天板に口金部大(注入口)口金部小(空気孔)各1個の口金部があり、その形状およびサイズ及び取り付け位置は日本工業規格(JIS)で規定されている。(図3)
このように規格化されているからスキャンしやすい。
また、材質が半透明なポリエチレン製であるため、Pシール内側に装着された金属対応RFIDタグの記録情報またはQRコードを読み取ることが可能となった。
「Pシール」は図2のAとBの2点でフランジ・カール部を圧着しているので、パッキン効果があり、気密性を持たせている。
また、「Pシール」端部がドラム缶口金カール部Bと天板Cで突っ張るので、「Pシール」と天板に隙間がなく、封印性があり、気密性をより高めている。破損しなければ除去できないため、正常についていれば、開栓されておらず、金属対応RFIDタグ及びQRコード自体の盗難防止になる。
また、材質半透明なポリエチレンであるため、耐候剤の配合などにより、変色させないように耐候性能を高めている。
金属対応RFIDタグおよびQRコードにはドラム缶内容物の商品情報が記録されている。商品情報には商品名、製造ロット№、製造年月日、内容物情報、消費期限、保存方法、製造者、発売会社、ドラム缶仕様、その他の情報が記録されている。
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金属対応RFIDタグを活用したドラム缶内容物の物流ソリューションの効果
ドラム缶の仕入れから内容物の作業部門毎に金属対応RFIDタグの情報を自動読取ることにより、作業改善と作業効率を高めることができる。(図4)
(1)主な効果
- 「いつでも」「どこでも」「だれにでも」タイムリーに商品情報が正確にわかる。
- グラウドで電子データのやり取りを行うので、紙の伝票をなくすことができ、これにより大量の伝票と保管が不要になる。
- 事務処理時間を短縮できる。
(2)各管理部門の効果
- 事務管理部門
各種紙伝票類が電子データになり、処理スピードが速くしかもミスが発生しにくい。また、ペーパーレスになり、環境にも優しい。
- 在庫管理部門
人手で処理していたが、自動で読み取ることができ、省人化できる。盗難防止効果がある。
- 物流管理部門
トレーサビリティができる。医薬品・農薬などの危険物を誤出荷及び盗難などを防ぐことができるため安全である。
- 品質管理部門
賞味期限管理ができる。
図4. 各作業部門で金属対応RFIDタグを読取り管理する物流ソリューションの流れ
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おわりに
ドラム缶の仕入れから内容物(商品)の充填(生産)・運搬・保管・販売又は消費までの流れをRFIDタグの商品情報を読み取ることによって管理する物流ソリューションを検討している。
ドラム缶内容物の物流ソリューションを成立させる高性能・高機能なポリエチレン製キャップシール「Pシール」を開発した。これにより、トレーサビリティを向上させることができ、物流全般の作業改善と作業効率を高めることが見込める。
今後、実証実験を推進していきたいと考えている。